イギリス大手小売業者のジレンマ
先月末に新政権のイギリス初の女性財務相であるリーヴス氏が初の予算案を公表しましたが、それが波紋を呼んでいます。イギリスの公的医療サービスを立て直すためには何処かからお金を徴収しないといけないのですが、やはり税率を上げる案が出されました。
そこで一番痛い目に遭っているのが小売業者とサービス業だといわれています。
例えば、雇用側が人を雇った時に国に支払う税金はNational Insurance Contribution(NIC、国民保険料)と呼ばれていますが、この税金は今までは給料が月に£9,100(約177万円)を超えなければ無税でした。それが今回£5,000(約97万円)からになってしまいました。また最低賃金は来年4月から21歳以上の場合 £12.1(現在のレートでは2,357円!)に引き上げられます。これは働く側にとってはとても嬉しいニュースですが、雇う側にとっては痛い出費。
そこで小売業者はどうするかというと、新卒の若者を採用するのをなるべく控えざるを得なくなってしまうと宣言しています。さらに、税金を払うためにはあまり売り上げのないお店は閉めることにもなり、利益を得るために売るものも軒並み値上げ。そうなるとインフレが起きてしまい、給料が上がっても実質変化なしという悪循環になってしまいます。
さらに2025年の10月からは包装課税なるものが導入され、リサイクルのコストを地方議会から包装を使用する企業に転嫁するものだそうです。なんで?となってしまいます。
この問題を解決するために予算案を修正してくれないかどうか、80の大手小売り業者が団結して署名を集め、政府と交渉を開始、具体的にはリーブス財務省にレターを書いたと今朝のニュースで報道されていました。
その80の業者にはAldi、Asda、Boots、 Currys、 John Lewis、 Lidl、 Marks & Spencer、Primark, Sainsbury’s などの名前がありました。尚、この新しい予算案は小規模・中規模の小売業者は守ってくれるので、今までと同じ税率の保険料で、包装課税も彼らにはかからないそうです。
それにしても医療制度を立て直すためのとばっちりを受けてしまったような小売業者、うまく交渉が成立して過度の値上げをすることもなく、また街角から消えないで欲しいです。
作成日:2024年11月19日
参考先記事URL:https://www.bbc.co.uk/news/articles/cp816jrnynyo、https://www.bbc.co.uk/news/articles/c5y37wqnvwxo
アイキャッチ画像:Photo by Bruno Martins on Unsplash
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