ドラムを叩くゴリラのCM

2007年頃にイギリスに住んでいた方はチョコレート会社キャドバリー(Cadbury)のコマーシャルを覚えているでしょうか?1度でも観たことのある人はすぐに思い出せるのではないかと思います。そのぐらいその広告は観る人を画面に釘付けにしたのです。

私も初めてテレビのコマーシャルを観た日の事は覚えていて、「何これ、面白い!」と叫んでいました。

普通のコマーシャルと違って、最後に少しだけそのチョコレートの名前が出てくるだけなので、一体何のコマーシャル?と最後まで目が離せませんでした。

このコマーシャルのことが10年以上経った今朝のBBCに載っていました。その当時、広報担当だったケリー コリンジ氏によると「初回の市場調査では、このコマーシャルは大衆にはウケないとの結果が出て、放映は却下された」そうです。ゴリラがドラムを叩いてもチョコレートには一切関係ないから、というのが理由でした。

その後しばらく放置されていたのですが、コリンジ氏はこれは眠らせておくのはもったいない、絶対に受け入れてもらえるはずだと確信し、ロンドンにあるハイテク技術を使って広告をテストする会社に「セカンドオピニオン」を聞くために持ち込んで分析してもらったそうです。その結果が良好だったため、もう一度上司に掛け合ってCMで流すことにしたところ大ヒットし、製品(ミルクバー)の売り上げもかつてない勢いで伸びたそうです。作成してから9ヶ月後でした。

この広告をテストする会社が取った方法は、従来のように会場に集まった少数の人たちにコマーシャルを見てもらうのではなく、その代わりに少なくとも150名の人にコマーシャルを見てもらい、買う買わないは別にして、そのコマーシャルを観た時の感情を記録してもらうという方法でした。

今ではこの会社のように、広告・コマーシャルが大衆に受け入れられるかどうかを事前に調べる会社が増えてきたそうです。それも最新技術を使ってオンラインでの調査ができるようになり、頼む方のコストも節約できるようになったとか。

人の頭の中には感動的なものや不快なものの方が、単なる事実やインパクトのない情報を流すよりもより鮮明に記憶に残ることがわかっているので、調査会社によっては、テストに協力する人たちのコンピューターの内蔵カメラや外付けのウエッブカメラを用いてその広告を観た時の顔の動きを記録するところもあるとか。

もちろん不快な広告となってしまった場合は、製品を購入してくれなくなってしまうので、「ウケない」と判断されると思います。ここで一番大事なのは「希望」という感情だそうで、希望こそが製品への信頼という感情を引き起こすことになると記載されていました。

ゴリラにドラムを叩かせてもチョコレートとは関係ないという固定観念に捉われずに世の中に出てくれてよかったな、と思わせるコマーシャル。リリースされた数年後には大衆が最も好きな広告にも選ばれたそうです。それにしても作った人はすごい才能ですね。

もちろん動画配信サービスで今でも観ることができます。もしもまだ観たことのない方は(騙されたと思って)1度観てみてください。ユーチューブでは再生回数が1,000万回を超えていました。

このゴリラ(に扮した人)の演奏を見ている数分だけ、大変な状況の世の中からしばし「離れる」ことできますように。(「離れる」ことの重要さについては過去のブログをご参照ください。)

作成日:3月7日

参考記事:https://www.bbc.co.uk/news/business-60584596

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