偽情報から始まったイギリスの暴動
7月26日にパリオリンピックの開会式が行われて以来、オンラインニュースのトップ記事は主にオリンピック関係でした。ところが7月30日以降は各地で起こっている暴動のニュースが毎日トップ記事になっています。
この暴動の発端はその前日に起こったとても痛ましい事件でした。夏休みになるとイギリスではいろいろな形でサマースクールが開催されます。勉強をするスクールはあまり聞いたことがありませんが、人気のあるのが体操、バレエ、演劇、工作、アウトドア活動、クリケット、テニスなど。近くのサマースクールを検索してみたところ、セイリングやお料理教室もありました。
そのようなサマースクールの一環でイギリス北部のサウスポートというところではダンス教室が行われていたのですが、17歳の少年が刃物を持って教室に入り、次々と幼い女の子を襲うという事件が起こってしまったのです。
その少年はすぐに逮捕され、ウェールズで生まれ両親はルワンダ出身、2013年にサウスポートに引っ越してきた、と報道されていました。それにも関わらず、事件の起こった直後から「犯人は1年前に小型のボートでイギリスに来た亡命希望者だ」という憶測がネット上で流れ始め、「イスラム教徒だ」というこちらも根拠のない情報が拡散しました。
そしてその事件の翌日に亡くなった少女たちを追悼する集会が行われたのですが、その近くのモスク界隈で暴力事件が発生。モスクや警官にレンガや瓶を投げつけ、放火さえ起こってしまいました。
それだけでは終わらず、翌日にはサウスポートからかなり離れたロンドンやマンチェスターでも暴動が起こり、根拠のない偽情報に煽られた多くの若者による暴動がその後も毎日続いてしまっています。亡命希望者が宿泊する施設も攻撃されました。路上にたまたま停めていた車もお店もパブも放火されています。店内の物は盗まれてしまいました。先ほど入ったニュースでは図書館も燃やされていました。
なぜここまで騒ぎが大きくなってしまったかというと、ソーシャルメディア上でたくさんの読者を持つ「インフルエンサー」と呼ばれている人たちが、暴動を促すようなメッセージを次々と投稿したのが主な原因だといわれています。
もう10日も経ちました。平和を訴える人たちのデモも始まり、ボランティアによる清掃、建物の補修も行われ、いったん落ち着いたと昨日のBBCでは報道されていました。ところが今朝のBBCでは週末に更なる暴動が予測されるため、政府は今「state of high readiness」だと報道されていました。State of emergencyが非常事態宣言という意味なので、この場合は非常事態準備宣言でしょうか?初めて聞きました。
今回の暴動では500名以上が捕まり、すでに有罪判決も出ています。フルネームと年齢付きでBBCにも写真が載っていましたが、全員男性でした。そして現場中継では子供の姿も多く見られました。夏休みだからでしょうか。知人がニュースを見ていたところ、石を警官に投げつけていたのはティーンエイジャーというよりも、11歳ぐらいの子供で、近くには乳母車を押した母親がいてその子に声援を送っていたのだそうです。思わずその乳母車に乗っていた赤ちゃんの将来はどうなるんだろうかと不安になってしまいました。
作成日:8月9日
参考先記事URL:https://www.bbc.co.uk/news/live/cpdlvz80pjzt、https://www.bbc.co.uk/news/articles/ckg55we5n3xo、https://www.bbc.co.uk/news/articles/cql8j2j0304o
アイキャッチ画像:Photo by Tolu Akinyemi 🇳🇬 on Unsplash
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