魔法の痩せ薬、その後

今年3月のブログで紹介した「魔法の痩せ薬」と言われる「ウゴービ」と、もともと糖尿病の治療薬として開発された同じ効果の「オゼンピック」の売れ行きが好調で、それらの製造元であるノボノルディスク社の今年1月から6月までの純利益が45億ポンド(約8,150億円)となり前年同期(2022年の1月から6月までの純利益)と比べると43%も増えたそうです。

薬の開発には9年から17年の歳月を要し、その間にかかる費用は約500億円といわれているので、この薬、しっかり元をとっているだけではなく、多大な開発費をかけたけれど薬にならず損をしてしまった分も補って余っているようです。新薬の開発成功率は約3万分の1ともいわれているので、この会社もだいぶ開発費を使っていることでしょう。

この会社のすごいところは、痩せ薬としても効果があり、糖尿病の薬としても効果があるという二刀流を創り出したこと。それに加えて、3日前に5年越しの治験結果が公表されましたが、このウゴービは心臓発作や脳卒中のリスクがプラセボと呼ばれる偽薬を投与された患者に比べて20%も減少したそうです。まだ正式に承認されるのは少し先になりますが、承認されればまさに三刀流⁉︎

このためノボノルディスク社の株価は上がる一方で株価に発行済み株式数をかけた時価総額は、大手ファイザーやイーライリリー、ジョンソン&ジョンソンを抜いてトップになりました。

この痩せ薬、本来の目的は病気の原因が肥満にある患者さんを減らすためのはずでした。ちなみにイギリスのNHS(国民健康サービス)は肥満が原因の患者さんの治療費に年間約65億ポンド(約1兆2,000億円)を費やしているとのこと。その金額を考えれば、NHSがBMI 35以上で少なくとも1つ以上の肥満が原因の症状がある患者さんにこの高額の薬を安く処方するのも納得できます。またBMIが27以上あれば自己負担でウゴービを入手可能とも書いてありましたが、いつからでいくらかは記載がありませんでした(nowpatient.com)。

この薬には他の薬と同様に副作用があり、これだけ投与すれば必ず痩せられるというわけではなく、「ダイエット、運動、ヘルシーなライフスタイルも必要」「そして専門家によるサポートも重要」とイギリス最大手のドラッグストアであるBootsの担当者が述べていました。

また薬の投与期間は最大でも2年間、その後に規則的な生活を維持しないと体重が元に戻ってしまうケースがあるといわれています。そして以前のブログにも書きましたが、ハリウッド初めセレブや金持ちの人たちが買い占めて、痩せた姿を写真に撮ってソーシャルメディアに載せているようです。そうではなく肥満が原因で病気になってしまった人、糖尿病で苦しんでいる人たちの元にこの薬が無事に届きますように。

追記:前回のブログではWegovyを「ウィゴビー」と表記しましたが、「ウゴービ」が一般的に使われているようでしたので、今回訂正しました。

作成日:8月12日

参考先URL:くすりを創る(中外製薬)nowpatient.com https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC251UC0V20C23A3000000/https://www.bbc.co.uk/news/business-66466951https://www.bbc.co.uk/news/health-64623284

アイキャッチ画像:Photo by i yunmai on Unsplash

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