女王様の懐事情
王室はこの時期になると「帳簿(年次決算書)」を公開しています。昨日のBBCにも「Royal finances; Where does the Queen get her money?(王室の財政:女王はどこからお金を得ているのか?)と言う見出しの記事がありました。
収入源の一つが政府からの王室助成金。では国民の収める税金の一部を女王様がもらっているのかと思いましたが、ちょっと違いました。クラウン エステートと呼ばれる公の不動産から得る収益を国に収め、その中の一部(15〜25%)が王室助成金という形で女王様に戻されるようです。つまり自分で稼いだお金ということ?
2021年から2022年にかけて支払われた王室助成金は£86.3m(約141.3億円)。ただし老朽化したバッキンガム宮殿の改修工事のため、総支出は前年に比べると17%も上がって£102.4m(約167億円)だったそうです。ここだけみると大赤字ですが、不足分は前年度に残った王室助成金が充てられた、つまり貯金で賄ったようでした。「備えあれば憂なし」は何処も同じ?
10年計画のバッキンガム宮殿改修工事は大規模な工事で、電気配線、配管、ボイラー、発電機など建物には不可欠なサービスの修理がメインのようです。カーテンや照明を変えたりするのはまだ先の話?
そして今年はジュビリーの式典に間に合わせるために、改修工事を急がせたため、「例年よりも4割ほど工事費が増えた」とありました。
工事費以外の出費は、公務を行うための移動費など。昨年だけで王室全体では2,300件の公務が行われたとか。その中にはガーデン パーティー、数々のレセプション、学校訪問などもありますが、一番の出費はウイリアム王子とキャサリン王妃が今年の3月にカリブ海諸国を訪問した時で£226,383(3千7百万円)かかったそうです。他にはヘリコプターでの移動代(179回、£906,005、約1億4千8百万円)、チャーター便(24回、£281,050、約4千6百万円)、鉄道による移動代(£64,447、約1千万円)などが公表されていました。後は人件費。兵隊さんもたくさん雇っていらっしゃいます。
女王様の大事な収入源であるクラウン エステートは、ロンドンの一等地のリージェントストリートやアスコットの競馬場の所有者故に入ってくる土地代などがあります。ただこれらの土地は女王様個人のものではなく、在位期間中のみ。なのでカリブ海に別荘を買いたいのでリージェント ストリートの一部を売る、などはできないようです。
また王室助成金は通常は国に収めた収益の15%でしたが、先述のバッキンガム宮殿の改築費用のために2017年からの10年間は25%に増額したそうです。
クラウン エステートの不動産収入以外にも収入はあるかというと、まだまだたくさんありました。こちらも不動産ですが、ランカスター地方やロンドンの土地も所有されていて、そこから土地代が入ります。またその収入を投資して得る収入も。
他にはお城を各地に所有されているし、宝石や絵画などの美術品、珍しい切手もたくさんお持ちです。それらを展示すると入館料も入ります。おまけに競走馬のオーナーとしても有名で、競馬では過去30年の間に約10億円の賞金も獲得しているとの話も。
BBCの記事では、警備費は王室助成金から支払われるのではなく、メトロポリタン警察が負担している。つまり国が払っているので、王室にかかる本当のコストは公表されている数字よりもはるかに高いという意見もありました。その一方で、王室が存在しているので、国内だけでなく世界中からイギリスに観光客が訪れているので、毎年経済に貢献していて、その収入は警備費を上回るとしている意見もあるそうです。
同記事には「女王様とチャールズ皇太子は不動産収入に対して自主的に税金を納めている」とも書かれていました。なんとかして脱税をしようとする人が多いのに、払う義務のない税金を納めていたとは。
96歳にして現役の女王様、一時期はだいぶ公務をキャンセルされていました。でも最近は4日間の間に3回も公務をこなされ、それもリモートではなく、公の場に姿を見せられたそうです。
作成日:7月1日
参考記事URL:https://www.bbc.co.uk/news/explainers-57559653、https://www.royal.uk/financial-reports-2021-22、https://www.bbc.co.uk/news/uk-scotland-edinburgh-east-fife-62001091、BAZAR (2019/11/29 )、fujingaho.jp(2018/07/05)
アイキャッチ画像:Photo by Hailey Wagner on Unsplash
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