シカモア・ギャップの木の苗、がんで亡くなった少年の思い出の木となる

今朝のBBCには約1年前に無惨にも何者かによって切り取られてしまった「最も人々から愛されていた木」に関する記事が載っていました。この木についてはショックが大きかったので当時ブログにも書きました(切り取られてしまった長年人々に愛されていた木)。

今朝の記事はその木の種から育った苗木の話でした。

イングランドの西にあるブリストルの近くに住むルースさんは2年前に一人息子のファーガス君をがんで亡くしてしまいました。2021年1月に骨にがんが見つかり、翌年の5月に12歳の若さで亡くなったのです。

彼女の一番恐れていたことは、子供が亡くなったあと、みんなが彼のことを忘れてしまうことだったそうです。

そこで彼女と夫のイアンさんは息子さんが生きていたことの思い出として、また同じようがんになってしまった子供達にも関心を持ってもらうために植樹する木をずっと探していました。そんな折、このシカモア・ギャップの木の種から育った苗のことを知り、今回分けてもらえることになったのです。

ファーガス君はこのシカモア・ギャップのあった場所にお父さんと小旅行に行く予定だったのにコロナでロックダウンになってしまったため、延期していたそうです。ロックダウンが解除された頃にはがんにかかってしまい、旅行は実現しませんでした。そのことからもこの苗木を植えることはとてもふさわしいことに思えるとルースさんは述べていました。

切り取られてしまった木は極秘であるところに運ばれ、そこの温室で種の栽培や接木が行われていました。そして約100個もの苗が元気に育っているそうです。高いのは1.5メートル以上もあり、さらに増え続けています。また9本ぐらいの接木や芽生えた木(の赤ちゃん)もあるとのこと。それらはいずれシカモア・ギャップの生まれ変わりとなります。

現在とてもセキュリティが厳しいところで育てられていますが、そこにはあのニュートンのリンゴの木のコピーもあるそうです。

シカモア・ギャップの木が何者かによって切り倒されてしまった時はたくさんの人々がとても悲しみましたが、この夏にその切り株から新芽が出始めたという知らせが届いた時は、多くの人に希望を与えてくれました。

苗を植樹できるのは来年になってからだそうですが、元々の木の高さが49フィート(15メートル)であったことから、49の苗を希望した人たちに分けることにしたそうです。1番最初の苗はチャールズ国王に送呈されました。そして2番目の苗がこのがんで亡くなった息子さんに送られます。

その苗を植える場所はすでに決まっていて、彼が学校に通う道にあった公園の土手のところだそうです。公園といっても滑り台や遊具がある狭い場所ではなく、リクリエーショングランドと呼ばれている緑地です。我が家の近くにもありますが、犬を散歩させたり、子供たちがサッカーをしたり、大人がジョギングしたりしていて、とにかく広い緑地です。下の写真は近所のリクリエーショングランドです。

3番目の苗の行き先もすでに決まっています。ロンドンから車で約6時間ほど離れたダラムという地区の海岸沿いにある「ティナのヘブン」と呼ばれる84エーカーほどの海岸沿いの領域のどこかです。そこは将来北海を見下ろす池や森林もある牧草地になる予定です。メンタルヘルスや依存症の問題を抱えて35歳で亡くなったティナという女性の母親が、ティナのような問題に直面してしまった人たちが回復できるような野生のサンクチュアリ(聖域、保護区)を作りたいと希望し、今開発が進められているのだそうです。そこの場所にシカモア・ギャップから育った苗木を植えるということは、最悪の逆境にさらされた後でも回復し、癒し、新たな始まりがあることを象徴していることだと母親のスーさんが述べていました。

苗を秘密の場所で育てている専門家の1人であるクリスさんは「私たちはこの物語のごく一部にすぎないが、この苗から育った木々は今後200年から500年は存在し続けるでしょう。そして人々に多くの希望を与えることができると思います」と話していました。

シカモア・ギャップの木は切り落とされてしまいましたが、それで終わりではなく、これからも今まで以上により多くの人に希望を与え続けてくれそうです。

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作成日:2024年9月27日

参考先記事URL:https://www.bbc.co.uk/news/articles/cy0gkn11je4ohttps://www.bbc.co.uk/news/articles/cn073v1r7xvo

アイキャッチ画像:Photo by Jannik Selz on Unsplash

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