ガス料金値上げによる「燃料貧困層」の増加

軍隊まで出動したパニック買いによるガソリン不足が2週間経ちようやく落ち着いてきたところで、またしてもガス料金値上げのニュースがトップ記事になっていました。それも来年の春の話。

10月1日のブログに今月からガス代の上限が上がることとその理由を書きましたが、昨日の夜に更新されたBBCのトップ記事は「来年には新たに150万世帯が燃料費を払うのに苦労する」と言う見出しでした。既に苦労している400万世帯と合わせると550万世帯。

なぜそんなに多くの人が苦労するのが目に見えているかというと、今回の値上げは卸売価格が4倍に跳ね上がる直前に価格が決まったので12%の値上げ(年間約£139、日本円で2万円)で済みましたが、この状態が続くとしたら次回はさらに£400-£600(6万から9万)の値上げになるとの予想だそうです。1年間で10万円も値上がり?

さらに記事を読むと、これだけ光熱費が高くなると120万から150万の家庭が新たに「fuel poverty」になると記載されていました。Fuel povertyとは一体何?燃料+貧困。日本語では燃料貧乏かと思ったのですが、燃料貧困層の方が多く使われているようでした。

2008年の日本総研の記事によると、Fuel Povertyはイギリスで収入の10%超が燃料費に使用されている場合だそうです。今回のBBCでは「収入の多くをエネルギー費に費やしている世帯」と定義されていました。収入の10%を燃料費に使っている世帯はかなり多い「はず」なので、ほとんどの家庭が燃料貧困層に該当しそうです (尚、Fuel Povertyの定義は2013年に下記の引用句にあるような定義に改訂されていました)。

ところで日本総研の記事によるとこの2005年に300万世帯だった「燃料貧困層」を2018年までにゼロにするとのビジネス・企業・規制改革省(BERR)による戦略があったとか。その戦略はいずこへ?

ちなみに「燃料貧乏」という単語も存在するのかどうかを調べてみたところ、投資用語集に載っていました。しかも、以下のように定義されています。


イギリスにおいて、支払わなければならない燃料コストが英国平均を上回り、燃料コストを支払った後の残余所得が貧困ライン(平均所得の6割)を下回る世帯と定義される貧困層のことで、近年のエネルギー価格の上昇により、イギリスの全世帯のうち約1割が「燃料貧乏」に該当しているとされ、寒さが原因で死亡者が増えるような事態にまで社会問題となっている。


なぜか日本総研同様「イギリスにおいて」と書かれています。え、なんでイギリスだけ?単に他の国ではFuel Povertyという単語は使わずに別な単語を使っているのでしょうか、それともイギリス特有の現象?

アナリストのKevin Peachey氏は「今提案できることは省エネの方法を見つけて節約し、多額の請求に備えるための予算を確保してください、と言うこと。そして冬よりも長く続くかもしれない経済的な寒さ (financial chill) に備えてください。」と述べていました。

長期の天気予報によると今年の冬の気温は例年通りとのことですが、いつもより寒い冬になりそうです。

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作成日:10月8日

参考記事:https://www.bbc.co.uk/news/business-58831110

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