ウクライナから避難して来た人を受け入れることができますか?

イギリスは2月24日に戦争が起こってしまって以来、ウクライナから避難した人たちの受け入れ体制がまったくできていないと欧州の他の国からも内部からも非難されていました。

欧州連合(EU)に所属する国ではもともとウクライナからはビザが無くても90日間までは入国できていましたが、今回は即3年間に延長しました。EUのウルズラ・ゲルトルート・フォン・デア・ライエン氏は、「プーチンの爆弾から逃れて来た人たちをすべてのEUの国では受け入れます」と宣言しています。EUに所属しているアイルランドは3月8日(火)の時点で2,200人、フランスは2,500人、ドイツは30,000人をすでに受け入れていました。ただしイギリスはEUから離脱した後に独自のスキーム(方針・計画)を立てました。ウクライナ ファミリー スキームというもので、イギリスに家族、親戚がいる人のみビザが発行されます。同じ3月8日の時点では300のビザが発行されました。たったの300?それも書類の手続きが複雑で一つ一つにかなり時間がかかっているようです。

なお多くの近隣諸国も避難民を受け入れています。例として、ポーランドは 1,525,000人、スロバキアは176,000人、ハンガリーは225,000人、ルーマニア85,000人でした。

3月10日にはBBCのロス アトキン氏が動画で以下のことを報道していました。

数千名の避難民がイギリスに来ようとしてフランスの港町のカレイまで来ましたが、そこには「ここではビザを発行していない。ビザが必要な人はオンライン上あるいは電話でアポを取ってパリかブラッセルに行くように」という張り紙があるだけ。戦争からやっと逃れて来た人たちにイギリスへ国際電話をかける、オンラインでサイトにアクセスするのがどれほど困難かもわかっていないような対応。カレイでビザを発行できないのは、取得に必要なバイオメトリック検査(生体認証)ができる機械を置いていないから。内務大臣であるパテル氏は、カレイに担当者を派遣して対応中、と述べていたが、実際にBBCの記者が現地に行ったところ取材は拒否されたもののガラス越しには避難した人たちにポテトチップスとキットカットを配っている3名のスタッフがいるだけ。またイギリスへのビザは他の国でも発行できるが、ポーランドでは、ビザを発行してもらうためにマイナス3度で雪の降る中長い行列を作り、3時間以上中に入れてもらうのを待っていた。その中には幼い子供も高齢の女性もいたと報告されている。

(参照先:The UK’s refugee response

また子供へのビザを発行するにあたっては両親の承諾が必要、という法律がありますが、父親は戦場にいるため承諾を得ることができず、その法律を今頃慌てて改定しているという遅さに加えて、発行するにはウクライナからの避難民であっても十分な収入があること、イギリスにとって利益をもたらす技術を持っていることを証明できること、などが条件になっている法律に基づいて対応しているので時間がかかっているそうです。この非常事態に何をしているの?状態です。たとえ家族がイギリス国内にいても時間がかかっているので、知り合いがいない人たちの入国はほとんど不可能?

そんなこんなでひたすら遅れをとっているイギリスですが、今朝のBBCに「ウクライナからの避難民を受け入れた家庭には月に約53,000円の援助金が支給されます」という記事がありました。明日の月曜日に詳しいことが発表されるそうですが、これはホーム フォー ウクライナ スキーム と呼ばれるもので、実施された場合は、イギリスに身寄りの無いウクライナの人たちも入国可能になります。

この計画に賛同した場合、各家庭は最低でも6ヶ月間、ウクライナからの避難民、あるいは家族を受け入れるのが条件です。受け入れる人を事前に知らなくても可能で、ソーシャルメディアなどを通して探す形になります。このスキームでイギリスが受け入れる避難民の上限はなく、一旦入国ができた人たちは3年間の滞在が許可され、医療や学校など公的サービスも提供されるそうです。受け入れる側も入国する側も審査が必要で、申請はオンラインベースになります。

政府はこの計画が順調に行けば、1週間以内に数万人のウクライナ人の住む場所が確保できると述べていました。住宅・コミュニティ・地方自治大臣のゴーブ氏はこの計画を発表した後に、「あなたもウクライナ人を受け入れますか?」との記者の取材に対し、「はい」と答えていました。

この計画、うまく行けばいいのですが、懸念を示している人たちもいます。ウクライナの人たちを「正式な難民」に指定していないので、いまだにビザが必要。取得には審査があり手続きが複雑で時間がかかる。また受け入れる側も、戦火を逃れて全て失ったというトラウマを抱えた女性や子供たちをトレーニングも専門家のサポートも無しにサポートできるのか、等。どうやら「1週間以内に」というのは楽観的過ぎるようです。

もともとなぜEUから離脱した理由の一つにイギリスに来る移民を減らしたいからというのがある国だけに、このような非常事態でもすぐにWelcomeとは言えないイギリスでした。

作成日:3月13日

参考先URL:https://www.bbc.co.uk/news/uk-60724111https://www.bbc.co.uk/news/uk-60682454https://www.bbc.co.uk/news/av/uk-60668779

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