日本の桜を救ったイギリス人の話

昨夜は王立園芸協会が運営するサリー州にあるウィズリー ガーデンに行ってまいりました。桜の咲くこの時期に特別なイベントがあったのです (Cherry blossom celebration event: Tour, Dinner and Talk)。ガーデンの一般公開が終わった後の17時15分が開始時刻。参加者は正確な数は分かりませんでしたが80名ぐらいはいたかと思います。

まず最初に受付のあるビルを通ったところでカクテルのサービスがありました。日本酒をベースにしたサングリアか柚子と生姜の入ったレモネード。その後は16名ぐらいのグループに分かれて、それぞれガイド付きで庭園に咲いている色々な種類の桜を見に1時間ぐらいかけて散策しました。

Wisley Garden: photo by Nobuko

寒空での散歩の後はガーデン内にあるレストランで5コースのお食事。なんと最初のコースは味噌スープ、それをレンゲを使ってみなさん音も立てずに飲んでいました。次はきゅうりと大根のサラダ、ほとんどの皆さんはナイフとフォークです。そして椎茸入りの餃子、ナイフとフォーク。メインがナスの味噌ソース、ナイフとフォーク。テーブルの両端に3本ずつナイフとフォークが並んでいた意味が分かりました。さすがにナイフとフォークで餃子は食べたことがないので、私たちはお箸だけを使いました。デザートは味醂で照りを出したフルーツと抹茶アイス。こちらはスプーンとフォークでした。

思わず食べ物の話になってしまいましたが、園内の桜、見事でした。日本でしたら染井吉野か八重桜がほとんどですが、昨日は10種類の桜を見ることができました。

ガイドの方からもそれぞれの桜にまつわる話を聞くことができましたが、食事の後は阿部奈緒子さんという「チェリー・イングラム 日本の桜を救ったイギリス人」の著者の方がスライドを交えながら桜の話をしてくださいました。

阿部奈緒子さんの話によると、コリングウッド イングラムという園芸家が日本で絶滅の危機にあった桜をイギリスに持ち帰って育ててくれたそうです。その中でも「太白」という種類の純白の桜は日本で絶滅したと見られていたのを逆に日本に送り返して無事に咲かせたとか。この桜の木が自分の庭にあることを日本の桜の専門家に知らせ、最初は穂木(桜を増殖する際、台木となる樹に接木(つぎき)する若い枝)を船で送ったけれど日本に着いた時は枯れてしまい失敗。その5年後に試行錯誤を得て穂木をジャガイモに突き刺してシベリア鉄道経由で送ったところ成功!

日本から持ち帰った穂木を彼の庭で接木をして咲かせた他にも野生種を人工交配させて新種の桜も作り出したそうです。そして彼の桜園を時々公開して一般の人にも花見をさせてくれたし、フラワーショーにも出品し、そこを訪れた植木関係者の手にも渡り、イギリス中に桜を広めるだけではなく、園芸雑誌や新聞に桜を紹介する無数の記事を書いたそうです。桜の伝道師ですね。

安倍奈緒子さんが本を書くきっかけとなったのが、日本では桜=一斉に咲いてパッと散るソメイヨシノでしたが、イギリスでは花の色から形状、開花の時期まで異なる多様な品種に接して日英の違いに思いをはせるうち、イングラムの名前を知り、彼に関して徹底的に研究をしたのだそうです。(参考先:日本記者クラブの記事より

イギリスではよく染井吉野以外の桜を見かけるな、と思っていたのですが、1人の園芸家、イングラムのおかげだったのですね。

3月29日の朝日新聞「天声人語」には、「戦後しばらく歌謡曲の世界では、桜の花を正面から取り上げるのが避けられたように見える。(中略)理由はおそらく、桜の花を兵士に見立てた歴史があるからだ。軍歌「同期の桜」では〈咲いた花なら散るのは覚悟〉と歌われた。」と書いてありました。昨日の講演でも、「桜が軍国主義イデオロギーに利用されていたこと」を話されていました。

ウィズリーガーデンに咲いている桜は今までも何回か鑑賞していましたが、昨日はガイドの方からきちんと紹介してもらい、美味しい食事の時間もあり、桜にまつわる悲しい話も楽しい話も聞くことができ、充実した時間を過ごすことができました。

↑ピンクの桜
↑白い桜
自宅の前庭で咲き始めた桜

作成日:3月31日

参考先URL:https://www.rhs.org.uk/gardens/wisley/articles/cherry-blossom-to-celebratehttp://www.news-digest.co.uk/news/features/15355-collingwood-ingram.htmlhttps://www.jnpc.or.jp/archive/conferences/33516/report/

コメント新規追加