新学期を迎えるはずが学校閉鎖

長い夏休みが終わり学校に戻った子供達が多い中、いつ壊れてもおかしくない危険なコンクリートの素材を使っているために全面、あるいは一部閉鎖になった学校もありました。中には近隣の学校に急遽振り当てられたり、リモート学習をすることになった生徒もいるようです。

この危険な素材のコンクリートはReinforced autoclaved aerated concrete（RAAC)と呼ばれ、日本語訳は「強化された軽量気泡コンクリート」でした。

今日のBBCでは朝からこの学校閉鎖のニュースがメインに流れています。というのは、このコンクリート素材は1961年頃から1990年代まで、多くの公共施設の建設に用いられていたのですが、寿命が30年ぐらいしか持たないので、このコンクリートを使った建物の一部が壊れたケースが何件かあり、学校が始まる数日前に政府から「待った」がかかったのです。このギリギリのタイミングで。

老朽化したら危険であることが報告されたのが1980年代、1990年代で、その時は屋根が壊れたので建物自体を壊して建て直ししたケースも報告されていました。

また2002年の上記と同じ政府の機関からの報告書では以下3つの結論が出されています。

①RAACを使ったパネルで20年以上経過した場合はおそらく劣化している。②20年以上経過したパネルにはなんの前触れもなく崩壊する危険性がある。③設置されたパネルの一部は規制を満たしていなかった。

もう少し調べてみたところ、政府は1994年から公共の建物にRAACが使われていて危険な状態であることを把握しており、2018年以降はその状態をモニターしていたとありました。なぜ1994年から2018年までの14年以上何もしなかったのでしょうか。

そして2021年から2022年にかけてRAACについてのガイダンスができ、対象となる全ての団体に対してのアンケート（情報収集）がやっと始まり、アンケートに答えた学校の中で約１％が今回閉鎖の対象として見つかったということです。ただし、このアンケートに答えていない学校がまだ1,500校近くもあるらしく、今後更に閉鎖の対象となる学校は増える可能性があるとのことでした。

建物全てを壊して建て替えるのはすぐには無理なので、臨時の対応策を立てれば学校を再開してもいいよ、とのことです。臨時の対応策とは、例えば危ないところは目立つテープなどを貼って出入り禁止にする、つっかえ棒を立てる、などでした。

そもそも何でこのコンクリートではない気泡だらけの偽コンクリートが多くの公共施設の建設に使われたのかもう少し調べてみたところ、「値段が安い、製造期間が短い、施工が簡単」という三拍子が揃っていました。でも逆に「耐久性が低く寿命は30年」という欠点は無視されてしまったようです。

おまけに今回の騒動で、2021年に当時財務大臣だった現スナック首相が、学校の立て直しのための予算を半分に削ったことが発覚しました。

当時の教育省のトップの話によると、その当時も学校調査が依頼され、その結果年間300から400校の補修が必要なことがわかったにもかかわらず、財務省に出向いたところ、100校だけを再建するための資金は得られたようです。その後2021年には100校を200校に倍増して欲しいとお願いしたところ、逆に年間50校に減らされてしまったと述べていました。ここでも予算削減の対象に。このことが明るみに出てから、また労働党のメンバーたちは首相を手厳しく非難しています。そして首相はといえば、「今回僕を責めるのは間違っている。これは今までの政府がやってきたことと同じで10年計画の一部だ。それに95％の学校はRAACの影響は受けていないし、今後（調査結果が戻ってきたら）数百校が対象になるとしても、教室1つだけの場合もある」と弁明していました。

2018年にケント州の小学校で天上のRAACを使ったパネルが剥がれ落ちたから他の学校でも起こり得る可能性はゼロではないので、親としては不安もあるでしょうが、いきなり学校閉鎖になり、子供の面倒を誰が見るのか困っている共働きの親がたくさんいると思います。またパンデミックになったみたいだと嘆いている女性のインタビューも載っていました。

1日でも早く緊急閉鎖になった学校が「安全に」再開されますように。