迷子になったスーツケース達

少し前になりますが、昨年は過去10年間で最悪のロストバゲージ(搭乗時に預けた手荷物が目的地に到着していないこと)の数だったのが、今年は減少方向にあるという記事を見つけました。

2022年に世界中で紛失、遅延、あるいは破損した(預けた)手荷物の数は約2,600万個。1,000個預けたうちの8個近くに相当します。それが最近は旅客数が増えているけれど、状況は良くなっているとのこと。航空業界の90%が利用しているSitaというITシステム会社によると、空港のスタッフの増員、並びに自動化技術が大きく貢献しているようです。

だからと言ってゼロになったわけではなく、この記事には友達の結婚式に参加するためにピサに行ったクロエという若い女性のことが書かれてありました。彼女は空港に着いて自分のスーツケースが最後まで出てこなかったとわかったら、申請書を提出し、急いでフローレンス行きの電車に飛び乗り、そのあとは街中を走り回り、当面の洗面道具や衣類を買い揃えることに最初の数時間を費やしました。本当は観光するはずだったのに、と悔しそう。そして一緒に行った友達は着替えをたくさん持っていたのに自分1人着た切り雀。どの写真にも同じ服装の自分。唯一ラッキーだったのは結婚式に着るドレスだけは機内に持ち込んでいたそうです。悪い予感がしたのでしょうか?

彼女が利用したのはEasyJetという格安航空会社。最初の3日間は1日£25(約4,600円)が支給されたそうです。また大抵の航空会社では最高で£1,000支払われるようですが、そこまで支払われることは稀だとのこと。それに航空会社は、紛失物は買った時の金額ではなく現在の価値を基準とするので、旅行保険などを利用した方がまだマシだそうです。

そして45日間待っても出てこなかった場合はステータスが「遅延」から「紛失」になるので、その間は宙ぶらりん状態が続きます。クレームもできなければ、ただただ待つだけの状態です。別な記事にはルフトハンザ航空でアメリカにホリデーに出かけた家族が預けた荷物のうち数個が出てこなかったので、毎日のように電話をしたけれど、電話番号のほとんどが不通状態。ホリデー中はホテルの洗面所でひたすら洗濯をしていたそうです。もうルフトハンザには悪い思い出しかない、と述べていました。

偶然知人のお嬢さんが英国航空のフライトでロンドンに戻ってきた時に荷物が出てこなかったという話を聞いたばかり。彼女も毎日のように電話をしていたそうですが、まるで進展なし。預けた荷物の中には少しばかりのお金では解決できない大切なものもたくさん入っていたことでしょう。

前述のSitaというITシステム会社で貨物の責任者をしているニコラ ホッグ氏は「どうにかして旅行客が安心して手荷物を預けられるようにしたい」とインタビューに答えていました。確かに空港で荷物を預けるときはいつも不安になり、目的地に着いて無事自分のスーツケースが出てきた時はとても安心します。

彼女によると2023年の前期の紛失・遅延・破損した荷物の数は570万個でパンデミック前の2019年同時期の580万個に比べて減少したとのこと。また今年5月から7月にかけて旅行客が増えたにも関わらず顕著に改善してきたそうです。

「このシステムは非常に賢く、(フライトに乗せそびれた場合)次のフライトをいち早く見つけ、人の手を介さずに、そのフライトに荷物を搭載する」と書いてありました。人の手を介さずにどうやってその荷物をフライトに乗せるのでしょう?思わずスーツケース達が名前を呼ばれたらトコトコ歩いて次のフライトに乗る姿を想像してしまいました。

また「ほとんどの場合は遅れても持ち主の手元に戻るが、1%以下ではあるけれど戻らない場合がある。その多くは、タグが取れてしまい、荷物に名前や連絡先が書いていないのが理由」だそうです。

尚、最近は荷物にGPSあるいはブルーツースのタグをつけるのが流行っていると書かれてありました。航空会社は頼りにならないので、自分で自分の荷物を追跡する方法です。

アップル社のエアータグが有名で、日本のアップルから直接購入すると一個が4,780円(税込)で4個が15,980円(税込)でした。アマゾン(UK)では4個で£99(約18,000円)。アップル以外では4個で£15.99(約3,000円)というお買い得品もありました。

このアップル社のエアタグをスーツケースにつけていたある男性はカリフォルニアからスコットランドの空港に着いてもスーツケースが出てこなかったので追跡したところ、そのスーツケースはカナダのトロント、そしてアメリカのデトロイト州に移動していたそうです。何故にそんなところまで?

荷物を預かるチェックインスタッフ、その荷物を搭載前にスキャンするセキュリティスタッフ、飛行機に搭載、飛行機から降ろす貨物スタッフ等、一部完全に自動化した機能を除き、まだたくさんの人たちの連携プレーが要となるので、スタッフの増員が重要。その前にこの未処理になっている迷子のスーツケースの数を減らさないことには、どうにも先に進めないともどう記事に書いてありました。その記事に載っていた山積みにされたスーツケースの写真を見ると、本当に再会できない確率は 1%以下なのか疑わしくなりました。

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作成日:8月24日

参考先記事URL:https://www.bbc.co.uk/news/business-66438234https://www.bbc.co.uk/news/business-62446937

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