がんの治療を受けるまでの待ち時間がとても長いイギリス
今朝のBBCオンラインニュースに「がんの治療を受けるまでにとても長い待ち時間があることが明らかにされた」という見出しの記事がありました。
がんの種類によって差がありますが、最も長く待たされるのは頭と首(頭頸部)のがんでした。こちらには口腔、咽頭、声帯、副鼻腔、鼻腔、唾液腺のがんが含まれますが、脳、眼、食道、甲状腺、頭頸部の皮膚がんは通常頭頸部がんには含まないそうです。
イギリスの国民保健サービスであるNHSが目標としているのが、診断後の治療開始まで62日以内(2か月、8週間と6日)ですが、今年7月の統計で、その62日以内に治療を受けられた患者さんは血液系腫瘍(白血病・リンパ腫など、骨髄も含む)と皮膚がんの患者さんがもっとも多く85%以上。最も少なかったのが前述の頭頸部のがん患者さんで約55%でした。
日本はどうかと思い少し調べてみましたが、国立がん研究センター中央病院の資料によると、予約電話から専門医診察までの日数はほとんどのがんで最短で翌日、診断後の治療までの日数は手術も含めて早くて1週以内、最大で乳がんの手術の8週から12週がありましたが、2週から3週以内が多かったです。(https://www.ncc.go.jp/jp/ncch/d001/gairai/machikikan.html)
また聖路加病院はさらに日数が短かいようです。病院選びも大切。
話をイギリスに戻しますが、この62日以内に患者さんの診察を開始するという目標を達成できたのがイングランドでは2015年が最後の年でした。北アイルランドは2009年以降は達成できていません。
このまま何も対応策をとらないでいると、この先5年間でイングランドの場合だけでも30万人のがん患者さんが62日以内に診てもらえないことになるとがん慈善団体の大手Cancer Research UKが推測しています。スコットランド、アイルランド、ウェールズ、北アイルランドを含めるとどれだけの数になるのでしょうか。
そして日本だと病院に連絡をすると翌日には診てもらえるようですが、イギリスの場合は、まず自分ががんだと思った場合は登録してあるGP(かかりつけ医のようなもの)に行き、そこで病院に紹介状を書いてもらい、じっと病院からの連絡を待つことになります。
今回の統計にはその部分の情報がありませんでした。病院で診てもらえるまでの待ち時間を含めると一体どのくらい待たされるのか。
ある医療関係者は「イギリスでがんになるということは死刑宣告を受けるようなものだ」と怖い発言をしていました。
それならば自費でやればいいのでは、と思いますが、自費はやはり高額でした。
がんの種類にもよりますが、一回の化学療法で最高£30,000(約575万円)とgofundmeというサイトに書いてありました。それも一回で終わればの話です。
新首相のキア スターマー卿は「壊れたNHS」を抜本的に改革するための10年計画を来年の春に発表する予定だそうです。
ただ少しだけ朗報もありました。NHSはこれまで以上に多くの検査を実施しており、62日以内に治療を開始した患者数全体では若干の改善が見られるなど、いくらか前進はしているようです。
作成日:2024年9月24日
参考先記事URL:https://www.bbc.co.uk/news/articles/cwy948p4j5wo、https://hospital.luke.ac.jp/guide/cancer/schedule.html、https://www.ncc.go.jp/jp/ncch/d001/gairai/machikikan.html、NATIONAL CANCER INSTITUTE
アイキャッチ画像:Photo by National Cancer Institute on Unsplash
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