旧式携帯電話、復活の兆し?
今やほとんどの若者に限らずあらゆる世代の人たちがスマートフォン(スマホ)を持っていますが、スマホから旧式の携帯電話に変える人が最近増えてきたというニュースがありました。少し前の記事になります。
日本ではガラケー携帯と呼ばれている旧式携帯電話、英語では「dumbphone」と言う単語が使われる時もあります。「dumb」には 「間抜けな」、「脳無し」、「アホ」、という意味があり、無理に訳すと「アホ電話」?
この旧式携帯の機能は通話、そして短いメッセージ送信のみ。機種によっては音楽も聴けるし、(画像がキレイとは言えませんが)写真が撮れる機種もありますが、インターネットには繋がりません。
この記事には17歳の女性に起こった出来事が書かれてありました。彼女が2年前にスマホを買い替えようと中古屋さんを訪ねたところ、格安の携帯を見つけたそうです。値段は£8(約1,300円)。ここでは、「アホ電話」ではなく、「ブリックフォン」という表現を使っていました。ブリックは煉瓦なので無理に訳すと煉瓦電話?なぜこの「煉瓦」が気に入ったかというと、インターネットに繋がらないので購入後はデータ使用料などが一切発生しないからだそうです。
そしてその旧式携帯を使い始めて、今までどれだけスマホが自分の生活に深く侵入していたかに気づいたと話していました。他の若者同様、彼女が以前所有していたスマホにはソーシャルメディアのアプリがたくさんインストールされていて、1日に何度もスマホをチェック、記事を読んだり投稿したりしていたので、集中して作業ができていなかったことにも気づいたそうです。ロンドンに住むこの女性は、不便も感じないし、前よりも前向きになった気がするので今後もスマホを購入するつもりは無いと断言していました。
この旧式携帯は世界中で復活の兆しを見せ始め、2018年から2021年の間では利用者が89%も増えたそうです。
また2021年に大手監査法人デロイト社が行った調査では10人に1人が旧式携帯の利用者だということもわかりました。
アップスイッチ ドット コム社の携帯電話に詳しいドク氏曰く、「この復活の兆しを見せた最初の電話が2017年に再度販売を開始した、元々は2000年に発売されたノキアの3310シリーズで、このシリーズは史上最も売れた携帯電話の一つでした。最新のiPhoneやサムスンの機能の充実さに関しては負けますが、バッテリーの持ちや耐久性は優れています」と述べていました。確かに電話以外は使わない(使えない)ので、バッテリーも減らないですね。
心理学者のオレイニチャク氏もスマホから旧式携帯に変えた1人です。5年前にバッテリーが長持ちするからと言う理由でノキア3310に買い替えたのですが、すぐに他にも優れた点があることに気づいたそうです。
「以前はなんでもスマホで調べ、フェースブックやニュースを読み、他にも知る必要のないことまで調べていた自分がいました。今はもっと家族と接する時間ができ、1番のメリットは他人の話に『いいね!』を押したりコメントしたり、自分の生活を他人に公開することも無くなったことで、もっとプライバシーが保たれるようになったことです。この機種変後、最初のうちはなかなか大変でした。以前はいったん家を出てから電車やバスの時刻を調べたり、レストラン情報を探したりしていましたが、変更後はそれらすべてを家を出る前にやらないといけないので慣れるまでは苦労しましたが、慣れてしまえば全く問題ないです」と述べていました。
これらの旧式携帯より、もう少し機能を搭載したライトフォン社が販売している携帯電話もあり、こちらは音楽を聴くことができます。でもこの会社は今後もこれ以上の機能、例えばソーシャルメディアやライブニュース発信、メール機能、その他不安を煽るようなものを無限に送り続ける機能は搭載する予定はないと言っています。
この会社は旧式携帯にしては高額であるにも関わらず、2021年には前年より150%の売り上げを記録したそうです。携帯の価格は$99(約12,000円)から。ちなみに最新のiPhone 13は86,800円から、iPhone 13 Proは122,800円でした。桁が1つ違います。(https://www.apple.com/jp/iphone/)
ライト フォン社の共同設立者のタング氏によると、以前は多くの人が2台目の携帯として購入し、週末だけ利用するパターンが多かったようですが、最近は1台目、あるいは唯一の携帯として購入する人も増えてきたようです。
タング氏曰く、「もしもエイリアンが宇宙から地球にやってきて、スマホの画面をずっと見ている多くの人々を見たら、地球はスマホに支配されていると思い驚くでしょう。そしてこのスマホに支配されている状況は悪化するばかりです。何かが間違っているのに気づいている人は多いけれど、どうしていいかわからないので、代替案を提供するのです」と。
確かに、設定によっては携帯を持っていればどこにいるかがわかり、何を読んでいるか、どんな単語を調べているかなどもどこかに送信され、どんなものを食べているか、どこに旅行するかも大勢の人に公開されています。
タング氏によると購入者の多くは25歳から35歳だということが驚きで、もっと(スマホを使いこなせない)高齢者が多いだろうと当初は予測していたそうです。
オックスフォード大学の人工知能の研究員であるワクテル教授は、「今になってよりシンプルな携帯電話を求める人がいるのは理解できる」と言っています。
「現在ではスマホの通話機能やショートメッセージの送信機能はほとんど『おまけ』の機能に近いと言えます。スマホといえばエンターティメントの中心であり、ニュースの発信源、ナビゲーションシステム、辞書、手帳、そしてお財布。またスマホは一日中あなたの注意を引くために警告音を鳴らしながら、あなたの作業を中断させています。時にはあなたを圧倒させてしまうことも。」
さらに、「わたしたちの中にはよりシンプルな技術を求める人がいて、旧式携帯がシンプルな時代へ戻してくれるかもしれないと考えるのは理にかなっています。そうすれば一つのことに集中する時間が増え、心を穏やかにしてくれるかもしれません。あまりに選択肢が多いと不安や焦燥感が生まれることは研究で明らかになっています」とも述べていました。
この部分を読んでいた時、以前息子たちが小さかった頃『ピングー』というペンギンが主人公のアニメを一緒に観ていて、ピングーが1人で部屋にいるときにヤカンのお湯が沸いてピーピー鳴り出し、次に電話がかかってきて、どうしたらいいかわからずに泣き出すシーンがあったのをふと思い出しました。
そこでインターネットで調べてみたところ、そのアニメ動画が見つかりました(やっぱりインターネットは便利?)
その動画のタイトルは「ヤカンと電話のベルで神経衰弱に陥るピングー」
ピングーのようにならない為にはスマホ離れが必要でしょうか。
作成日:4月11日
参考先URL:https://www.bbc.co.uk/news/business-60763168
アイキャッチ画像:Photo by camilo jimenez on Unsplash
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