救急隊による1回目のストが終わったイングランドとウェールズ
昨日イングランドとウェールズで救急隊員による1回目のストが行われました。これにより数千人の救急隊員、コールハンドラー、技術者が出勤せず、各病院の前にピケットを貼りストに参加したりしていました。この理由は賃上げだけではなく、長時間労働、病院の前で重篤な患者さんを乗せたまま何時間も待たされることに抗議してのストだったそうです。
なぜこのストを事前に回避できなかったかというと保健相のスティーブ バークレー氏が話し合いに応じてくれないからというのが救急隊員の労働組合側からの意見です。ところがバークレー保健相によると「すでに来年に賃上げすることは決まっていてこれ以上賃上げすると他の部署(医者や看護師)の給料を下げることになる。この時期にストをするなんて患者の命を危険にさらしている」とあくまでも労働組合側を責めています。ということは次回28日のストも予定通りになりそうです。
労働組合側によると、「救急車が全く出動しないわけではなく、たとえスト中でもピケットを張っている隊員はユニフォームを着用し、救急要請が生命に関わる場合は対応することになっている」とのこと。連絡を受けた(ストに参加しない)コールハンドラーがどれだけ急を要するかをカテゴリー別に仕分けするのですが、下記のカテゴリー1と一部のカテゴリー2がこのスト中でも対応可能とのこと。
- カテゴリー1:心停止や呼吸停止など、生命の危機に瀕した状態
- カテゴリー2 :脳卒中や胸痛などの重篤な状態であり、迅速な評価や緊急搬送が必要と思われる場合
- カテゴリー3 :合併症のない糖尿病の問題など、緊急の問題で、治療と急性期病院への搬送が必要な場合。
- カテゴリー4 :安定した臨床症状など、緊急性のない問題ではあるけれど、病棟または診療所への搬送が必要な場合
まだストが終わったばかりで詳しい情報は入っていませんが、ほとんどの病院の救急外来はいつもより静かだったとの報告がありました。なぜ少なかったのかというと、事前に「スト中は危険なスポーツは避けること、飲み過ぎないように注意すること、不要不急の運転は避けること」など国民に呼びかけたからかもしれないそうですが、実は一日我慢していてストが終わった翌日(22日)には患者が押し寄せる可能性もあると懸念されています。
なお出産間近で自宅での分娩を希望している妊婦さんにはストの間に産気づいたら病院に行くよう事前に連絡をしていました。というのは自宅での分娩で何かが起こってしまっても、この場合はカテゴリー3になるので救急車は来てくれないとのこと。ただでさえ不安な妊婦さんには辛いストとなりました。
また転倒などで大怪我をした場合もカテゴリー3に該当するため救急車は来てくれないので、家族やタクシーを利用して救急外来に行くようにとの事前通知もありました。ただ腕の骨折ならまだいいのですが、大腿部など下半身を骨折して動けない場合は、家族やタクシーは無理ではないかと。お年寄りのいる家庭では注意してくださいとも呼びかけていました。
このストにより救える命が救えなかったかどうかは来年1月下旬に発表される12月のストの日の死亡者数を前年の同じ日と比べればある程度はわかりますが、ストの日ではなく、数日後に亡くなる場合もあること、あるいはストが原因ではなくコロナやインフルエンザが原因で急増した場合もあるので、正確な数を割り出すのは難しいとのことです。でも正確な数がわかったり、責任が誰にあるのかわかったところで大切な命は戻って来ないのであまり意味はないような気がします。
ストがあってもなくても、救急車のお世話にならないで済むように健康管理を万全にするのが大切だとしみじみ思いました。
作成日:12月22日
参考記事URL:https://www.bbc.com/news/health-64037468、https://www.bbc.com/news/uk-politics-64050277、https://www.bbc.com/news/health-64053080、Understanding ambulance response categories
アイキャッチ画像:Photo by Super Straho on Unsplash
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